Nuclear Energy & Nature

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広島の赤とんぼ

1945年8月6日午前8時15分に広島市上空から原子爆弾が投下された。

米軍撮影と思われる広島市外の写真

 人類史上最大の惨禍をもたらした事象だ。この後、秋になり、広島には赤とんぼが大量に発生したという。赤トンボだけでなく、昆虫や魚類、鳥類も通常よりも多く目についたという話がある。人によるさまたげがなくなり、自然が力を増したともいえる。

 赤とんぼが増殖するには、幼虫のヤゴが水中にひそかに生きていたことが必要だ。通常であれば、淘汰の営みによって、適正規模の羽化が行なわれたのであろう。通常以上に羽化が起こったところに自然の力の大きさを感じる。自然には大きな弾力があって、仲間である人間が弱っているときに大きな力を発揮して再生を助けてくれたのではないだろうか。

 彼らは自然の力によって、科学の惨禍を復旧させようとしたのではないか。急速に元に戻すことはできないだろう。しかし、それを毎年毎年続けることで何百年、何千年ののちに元の姿に戻してくれるのだろう。

 広島は復興を遂げた。そこは、アスファルトとコンクリートに覆われた街ができた。この惨禍は二度とないだろう。しかし、もし、何かが起こったときに助けてくれる自然の力はもう発現されないかもしれない。

チェルノブイリ原子炉壁に生きる黒色真菌

広島、長崎への原爆の投下、以降の太平洋や砂漠における原爆、水爆実験。米国で起こったスリーマイル島原子力発電所での事故。1986年にはロシアでチェルノブイリ発電所事故が起こった。

 2007年に米アルベルト・アインシュタイン医科大学の微生物学者、アルトゥーロ・カサデヴァーイ氏らの調査で、チェルノブイリ原子炉壁には高濃度放射線環境を好み、放射線によって成長が促進される菌類がいることが分かった。

 チェルノブイリ原発事故では、住民や対応関係者にも多くの影響がでたことが知られている。周辺の自然環境においても、動植物、昆虫に奇形が通常より高い確率で発生しているとされる。一方で、人が住まなくなったことによって、自然環境が再生しているという観察も行われている。

 事故を起こしたチェルノブイリ4号機はコンクリートで固められて石棺と呼ばれた。しかし、コンクリートは劣化し、放射能漏れ、放射性元素の流出が進んでいる。これをさらに多いかぶせる人類史上最大の構造物の建設も進んでいる。

 人類の対応が完遂できない一方で、放射能を好む菌が存在する。これは、人類と核エネルギーとの付き合い方に示唆を与えている。人類が計算する工学的手法以外にも生物的調和という世界があるのではないか。

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